箱木家住宅(重要文化財)
最近、古民家住宅が見直されてきていますね。
京都では、古民家を改装したレストランやカフェが増え、どの店も落着いた雰囲気で心地良い空間になっています。
私の所属する建物調査の団体「日本インスペクターズ協会」の勉強会で、「古民家住宅」についての勉強会があり、その中で「箱木家住宅(箱木先年屋)」が紹介されました。
その内容が非常に興味深いもので、実際に自分の目で見たくなり、早速訪れることにしました。
写真が「箱木家住宅」です。
おそらく日本に現存する最古の民家で、築年数ははっきりしていませんが、14世紀頃(600~700年前)室町時代と考えられているようです。
「箱木家」は集落内ではかなり有力な地侍で、この時代では豪邸だったようです。
家に入ると「には」とよばれる土間があり、そこに釜があります。
その釜の前に洗い場があります。
洗い場の中央部に穴があり、外に繋がっているようです。
こちらが外側ですが、洗い場で使用した水が外へ排水される仕組みになっていたようです。
「にわ」の中には「うまや」があり、当時は人と馬が同じ屋根の下で生活していたことがわかります。
この時代の人にとって、馬が貴重であったことを感じさせますね。
こちらは茅葺屋根の小屋組です。
室内は吹抜けており、天井の高さは、7~8m程度はありそうです。
材木の固定には、釘は一切使用されておらず、仕口と縄で組み上げられています。
写真は屋根をささえる部分、現在でいう「垂木・野地板」に相当する箇所ですが、竹と縄で構成されています。
靱性力(粘り強さ)と弾性力(元の形状に戻る力)に富む竹材で、固定部に縄を用いることにより、変形能力が高く、衝撃を吸収できる構造になっています。
今でいう「制震構造」に近い構造と思われます。
こちらは室内をサーモグラフィックカメラ(赤外線カメラ)で撮影した様子です。
この日は秋とはいえ、晴天で外気温はかなり高かったのですが、室内は驚くほど涼しく快適な温度に保たれていました。
茅葺屋根と土壁で構成された住宅の断熱性の高さが良くわかります。
上で紹介したサーモグラフィックカメラ(赤外線カメラ)と同じ角度で撮影した写真です。
この時代、現代のように科学は発達していませんが、暮らし経験により、適切な材料選びをなされていたことが理解できました。
ちなみに「箱木家住宅」では、写真のような昔の農具なども展示されており、建築以外の角度からも楽しめますよ。